
はじめに
現在リトアニアで大学院生をしています。昨年祖母が亡くなり緊急帰国しましたが、まさかのアフリカ(しかもわりと地方の方)でフィールドワーク中で、結構大変でした。海外在住・海外留学中の人にとって身内の急な死や葬式への出席というのは、覚悟しつつも1番恐れていることではないでしょうか。
ちょうど今週祖母が亡くなって一周忌でした。色々と当時のことを思い出す機会にもなり、せっかくだからとその時のことを記録しておこうと思います。楽しい話題ではないかと思いますが、もし同じ状況にある人の参考になれば幸いです。
経緯
突然ですが、私の研究はアフリカのサンプルがメインです。2025年3月には指導教官(イギリス人)と一緒にイギリスのチームと一緒に、アフリカはガンビアにサンプル採取に行っていました。ちょうど空港から3-4時間離れた国境近くの村に滞在していました。2-3月に2週間ガンビアに滞在し、その後指導教官とサンプルをそのままイギリスまで持って帰り、3ヶ月イギリスでそのまま研究を行うというプロジェクトでした。そのためにグラントも2つほどもらっていました。ちょうど研究も折り返しとなった3月2日、早朝からのサンプリングから午後ホテルに帰ってきたら、家族から連絡がありました。(余談ですがガンビアは電波事情が悪く、さらにホテルのWifiが結構な曲者で、1日でLINEの文章3-4個読めたらマシな環境でした)。
家族に連絡を取ったところ、葬儀場や神社の予約が混み合っている関係で(私は無宗教ですが一応一族代々神道です)、明日すぐに葬式というわけではないと確認。周囲の助けもかりつつ、なんとか航空券の値段を調べますが、そもそもガンビアというマイナー国のため、アフリカ内での飛行機乗り換えが多数。一週間に何回かしか便がないものや入国にビザが必要な国も多く、明日明後日帰れるという状況ではありませんでした。
そこで、たとえばイギリス経由で帰るとどうなるかも見てみると、直行便のあるJALやANAはまさかのエコノミーでも70万ほどでなかなかなお値段...(普段何ヶ月も前に買うと20万円前後ですよね?)。直行便なしで見てみるとロンドンから香港経由のキャセイパシフィックで直前でも20万円ほどのがありました。
家族と指導教官に相談し、もともとすぐに葬式をできる状況ではないので、ありがたいことに私のフィールドワークを終わるまで待っていてくれることになり、亡くなってから10日後の葬式となりました。村から空港までの手段のなかなかなかったので。なので私は、フィールドワーク残り一週間は指導教官と行い、一緒にロンドンまでは行き、一週間だけ休みをもらい日本に緊急帰国することにしました。
時系列としては
3/2 祖母が亡くなる
3/7 ガンビアからロンドンへ ロンドンで一泊
3/8-3/9 ロンドンから東京へ(香港経由)、東京に夜に到着 (18時間)
3/10-3/11 お通夜・告別式
3/14-3/15 東京からロンドンへ(香港経由21時間)ロンドンに早朝に到着、高速バスとタクシー使ってイギリスの大学に夕方着。
というスケジュールでした。帰国まで数日ですが少しだけ余裕持って帰れたのでよかったです。研究助成金についても、フィールドワークは遂行し、イギリスの滞在日数が少し変わっただけで研究時間数には問題がなかったので無事うけとることができました。
キャセイパシフィックについて
直前でしたが、普段と同じような値段で帰国できてよかったです。時間も直行便と数時間の差だったので、日程に問題はなく。香港だと日本人ならビザいらないし顔認証で乗り換えできるので、香港-羽田便でチケット確認なしで顔認証で乗れてびっくりしました。香港乗り換え結構ありです、イギリス在住の方とか、緊急の帰国だけでなく普通に候補に入れてもいいと思います!(ただ普段から20万円前後らしいので、早めにチケット取る人はどうしても日系の直行便になるのかも?いままで候補でたことなかったので)。ご飯もなんなら日系より美味しいし、座席も快適でよかったです。ロンドン-香港間で2食、香港-東京間で1食ガッツリ出ました!
ガンビアから帰るにはターキッシュエアラインも候補にありましたが、私が帰国しようとしているときは結構アフリカ経由がでてきて断念しました。普段なら就航都市数最大手だしアリかも。

あと、エアカナダやデルタ航空など一部の航空会社では、ビリーブメント運賃とういう身内の不幸のための緊急渡航用費用があるらしいです。調べた限りヨーロッパ日本間だと見つけられなかったのですが、使えるようでした覚えておいても損はない制度かと思います(死亡診断書や電話での予約が必要だったりするのでハードルは高そうですが)
海外在住者、お葬式は帰るべき?
個人的には悩むくらいなら絶対出席するべきだと思います!故人と会える最後の場です、また親族とも思い出を分かち合えます。私の場合は両親含め私の日程を尊重してもらえたためかなり待ってもらえて出席できましたが、出席できて本当によかったです。
冠婚葬祭以上に大切な用事、人生にはなかなかないと思います。悩むということは、日程やお金の面での難しさはあっても、無理やりすればとうにかなる状況なのではと思います。アフリカで電波が少なくフィールドワークしてた人間が帰れるので、大抵の人は多少無理すれば帰れるのではと思います。私も、たとえばリトアニアで普段通りの生活だったら、最低でも次の日の夜か2日後の朝には帰れたのではと思います。
昨今の世界情勢や健康状態、ご家族(お子さんがいるとか)だとなかなか帰国が難しいこともあるかもしれませんが、絶対に無理だったら帰国悩まないと思うので、悩んでいる人は絶対帰国するべきです。私の場合は日程調整等で周囲に多大な迷惑をかけましたが(そして祖母も冷たい中にずっと居させてしまった)、頑張ってでも海外から帰国すると、わざわざ海超えて遠くから、という雰囲気になるので、親戚からの印象は悪くないかなとも感じました。
私は祖母と同居しておらず、祖母は10年近く老人ホームでお世話になっていました。そしてコロナ禍以降は面会もなかなかできず、かなり前から面会予約を取って、ホームに敷地内にある面会室(ガラス板で部屋が分かれていて直接触れ合えない)で少しだけ話せるという状態が続いていました。もしお葬式に出席できなかったら、今でも祖母の死をちゃんと受け入れられずにふわふわした気持ちだったかもしれないと思います。ちゃんと区切りをつけられたという意味で帰国して本当によかったです。
海外留学はリスクか?
海外留学生、移住者が恐ることの一つに、日本の家族の死やいざという時に間に合わないかもしれないということがあると思います。少なくとも私はそうでした。それで、とうとうそれが来てしまったわけです。では私が留学していることを後悔しているかというと、そんなことはないです。日本ではできない貴重な経験をさせてもらっていて、すごく幸せです!
実は、祖母の死には誰も立ち会えませんでした。祖母はもともと心臓が弱く、老人ホームの深夜に眠るように亡くなり、気づいた時にはもう...という状態でした。前日には母とも電話で話せていたほどだとか。何度か体調が悪くなることはあっても、突然、という死でした。個人的には、長年慢性的な痛みに苦しんでいた祖母の最期が穏やかな眠りだったことは救いだったかなと思いました。
容体が急変したときに会えないかもしれない、というのは海外在住者の抱えるリスクかもしれません。しかし、日本に住んでいても、実家が遠かったり、また近くに住んでいていても私の家族の場合のように看取れないこともあります。日本に住んでいるからと言ってリスクがないわけではないです。もしそれが理由で留学するか悩んでいる人が居れば、そのことを念頭に置くべきかなと思います。
いざという時の心構えとしてできること?
では、海外在住の私達はこのような事態にどのように覚悟を決めればいいのか、どのように過ごしていけばいいのか、自分なりに考えてみました。
1. 海外に住むことで失っているものに自覚的になる
まずここかなと思います。何を得て何を失っているかにきちんと向き合うべきだと。例えば、私は海外で学生として自分の興味ある分野で研究できているし、有名な研究者の間で経験を積めています。私はもし日本に居たら大学院にお金なくて進学できていないです(リトアニアは博士課程の学生は授業料無料で生活費が政府から支給されます)。
一方、家族や友人たちから遠く離れて居るため、過ごせる時間は圧倒的に少ないです。時差もあるのでなかなか電話をすることも難しいです。こちらに来て3年目も半ばですが、このお葬式を含めて帰国したのは2回です。日本にいればすぐ会えますし、電話するのも簡単です。日々忙しく過ごしていると忘れがちですが、圧倒的にこうして失っている時間が多いです。
最近は、こちらからも積極的に家族や友人と連絡を取るようにしています。家族のLINEは、以前は業務連絡だけですが、近況報告も入れ始めました。なかなか連絡を取れないことも多いですが、もう少し電話や近況報告の数やせっかくの海外なので国際郵便を出す回数を増やしたいと思っています。また、今年一ヶ月ほど帰省して、色々な友人たちとも会いました。台湾の友達にも会いに行きました。こんな世の中だからこそ、一回一回の会える時間を大切に、いつか行こう、会おう、と思っていたことを先延ばしにしないようにしたいと思っています。あと写真をおりに触れて撮っておくの大事だなあと思いました。
2. 緊急事態のときに必要なもの
まずお金!当たり前ですが、金銭的余裕があれば緊急事態の時の選択肢がぐっと広がります。いざという時躊躇わずに飛行機に乗って帰省できるお金は確保しておくべきですね。この件でSwedbankで預金口座始めました。
あとは、いざというときのためのことを話し合っておくこと。私の場合だと、例えば忌引きの仕方や、研究費をもらっている場合の突然の計画変更の手続き等、前もって確認しておくべきだったなと思います。あと、これまた個人的ですが、いざというときのためにパスワードとかも姉と共有し始めました。
何はともあれまず一番は周囲の人との報連相なので、そこも忘れずに。
3. 葬式参加は自分のため、相手の為になることは日頃から
葬式に参列するかしないかは、結局は自分の為です。ちゃんとお別れをしたいから行く。だから、もし帰国が難しかった場合は、あまりそこで自分を責めない方がいいと思います。亡くなってから何かしてあげても、結局それは残された側の自己満足なので、相手のためにしてあげられるのは生前、ということも、当たり前ですが改めて今回実感しました。もっと色々なこと一緒にしたかったな、お話したかったなと思います。1と同じ結論ですが、失っている時間を常に意識して、自分ができる精一杯のことを、相手のためにできたらなとも思います。
最後に
とても個人的なことでしたが、自分の中のことの記録として残します。結論私は運良く帰国できお別れが出来ましたが、それぞれ事情はあると思います。家族にも沢山迷惑をかけましたが、深夜便への送り迎えや葬儀の手続き等本当にお世話になりました。感謝です。
私も、たとえば自分が喪主となるような場合だったらまた状況は全然違ったと思いますし、昨今の状況ではいつ何が起こるかわからない世界でもあります。事前に備えつつ、後悔がないように、会える時間、話せる時間を大切にしたいと思います。